2013年11月11日月曜日

やっているだけの継続は練習ではない 頭脳を使う時短練習

多くの方に「どうすればもっとうまくDJできるようになるか」と聞かれることがあります。
そこで、私なりの練習方法について記事にしておきたいと思います。あくまで主観ですのでこの通りにするのがベストとは言えません。私のようなスタイルの場合この方法があてはまるというだけです。参考にならない方も多くいるでしょう。各自自分なりの練習方法見つけてくださいね。


まず練習と言う場合、多くの人が実際に、

CDJやターンテーブル、PCコントローラーを目の前にして触ってとにかく慣れる=練習

と思いがちですが、そこが間違いだと思います。そのような練習はとにかく

「時間のムダになる可能性が非常に高い」

という事を認識してください。練習USTでーす、とか練習でとにかく曲を繋いでるだけの人は特にこのパータンに当てはまります。また自分の録ったミックスを聞き直してるだけの人も同じくです。その時間あるなら、つなぐ前のオリジナルの曲を聞いて小節数の構成把握のメモとるほうがはるかに効率的です。 

繰り返すだけの練習は「建設的な学び」にはならず、単純にやっているだけを継続している「短絡的な学び」「楽観的な学び」になってしまうでしょう。さらにやっかいな事に、DJプレイの練習には「楽しさ」という危険な猛毒がついてまわるので、自分のプレイを客観的に捉える能力を失い、自分が気づかぬうちに「悪いクセ」を覚えてしまい、せっかくの練習自体がマイナス効果を生み、その「悪いクセ」から脱却するのに、さらに多くの練習時間がかかるという最悪な悪循環を生みます。

「練習した」度合いの指標として、その行動に費やした時間を上げがちです。「今週は◯◯時間練習した!◯◯分もミックスした!」というように。しかし、多くの時間を費やすだけでは上手にはなれません。意図的に目標をもって効率よく練習することとは、また別のことです。それは単純に練習をしている"風"のムダな時間消費活動です。

やっているだけの継続は練習ではないのです。

大事なのはどのような内容の練習をしたかどうかです。


では何が必要かというと「意図的に頭脳を使う練習方法」です。
意図的に頭脳を使うために必要なのは

何が問題なのか
どうなりたいのか

まずこの2つの問題をきちっと定義し、分析してください。

自分は何が出来ない、苦手なのか。自分の憧れているDJさんのどの部分に憧れているのか。なぜ憧れの人は人に惹かれるプレイをするのか。

はっきり分析してください。苦手な部分はどう苦手なのかきちっと検証しましょう。現場での録音、練習ミックスの録音を聞き直して苦手な部分を洗い出しましょう。
その後、次に自分が憧れている人の特徴を徹底的に調べましょう。その人の事をなぜいいと感じるのか、どのようにどこからミックスしているのか。
「やっぱあの人はもってるグルーブが違うからさー真似できないよねー」とか言う人がいますが、断言します。必ず真似できます。
真似出来てない、参考にできてないのは

あなたの練習方法が間違っている=定義・分析・検証といった頭脳を使った科学的プロセスを伴った練習をしていないから

です。

この定義・分析・検証は今のデジタルDJ時代ではかなりしやすくなっています。

機材の仕組み・曲の構成の把握・小節数の把握・音色の把握・キーの把握・グルーブの違いの把握

今の時代の恩恵をめいいっぱい受けて、効率よく定義→分析→検証→下準備とつなげてください。インターネットで海外の文献たくさん読んでください。ハーミニクスミキシングの記事、選曲構成の記事、機材のテクニカルな使い方の記事、たくさん転がっています。YoutubeにHow Toの動画たくさんあります。(英語わかりませんっていう人は、自分がチャレンジしようとしてるカルチャーがどこからやってきたものか考え直してください。単純です。英語の勉強すればいいんです。今の時代英語なしに分析能力上げることは不可能に近いです。)

では、実際に私の場合でお話すると、CDJやターンテーブル、PCコントローラーを目の前にして触って練習するということはほとんどしません。必要ないからです(※1)。
ではなぜ必要ないかというと、事前に定義・分析・検証を行い、楽曲・機材共に全てを把握し、全て、

想像=イマジネーションできるトレーニング

をしているからです。


楽曲に関してはすべてマーカー付けとクリップの整理により、どの小節数・拍数でどの音色が入ってくるか、減っていくかを事前にAbleton上で把握してる。
結果、実際にミックスしなくてもどのように混ざっていくかは頭でシュミレーションできる。(それはTraktorでもRekordboxでもCDでも秒数拍数メモすればできます)

エフェクター、ミキサーに関してはどのエフェクトをどの拍数(1/4拍や1/8拍)でかければどのような効果がでるか把握してる(※2)。
結果、実際にエフェクター操作しなくてもどのようにエフェクトがかかっていくかは頭でシュミレーションできる。

選曲、構成に関してはこれまでの経験上どのような曲をどうかければ効果ができるかを把握してる。
結果、実際にやってみなくてもどのように盛り上がるかは頭でシュミレーションできる。


ですので、必要なのは実際の触っての練習ではなく、

曲の構成の把握に時間をかける
通勤通学時などにiPodとメモするアプリがあればいつでもどこでも可能

エフェクト、ミキサーでのミックス構成のイマジネーション
頭で想像してエフェクトをかけるので、iPodがあればいつでもどこでも可能。むしろなくても可能。頭で音楽鳴ってればそれでよい。

選曲構成経験蓄積
自分がうまいと思う人のプレイを見にいき、選曲、曲順、どこまでかけるか、どのようなエフェクトか等を時間軸(→重要)に基いて整理して把握する。人の流れ、空調、照明全てに注視しましょう。Shazamとメモアプリがあればどこでも可能(酒飲みながらぼーっと見てるだけとか全く意味ありませんからね)


実際の機材を目の前にした練習時間というのは制限があります。しかし、日常生活の中でなかでイマジネーションに費やす時間はたくさんあるのです。その時間を練習時間としてください。その時間で練習できるような「意図的に頭脳を使う練習方法」を行ってください。

ミックスやエフェクト、マッシュアップ等アイデアが浮かぶとすぐに、私は想像の中でそれを組み立て始めます。今までのデータから定義・分析・検証し、そこから科学的プロセスを伴って処理できない問題はめったにありません。すべての影響を計算すれば、結果は事前に予測可能です。
このやり方ですと、実際に機材を目の前にした練習時間は少なくすむはずですし、かつ非常に生産性の高いものになるでしょう。

(定義・分析・検証含めた)下準備とイマジネーション、プラスアルファ実際の少しの練習、すべてを意図的に頭脳を使い、科学的プロセスを伴うことで飛躍的にあなたのスキルは伸びると思います。時間は全人類に平等で、限りあり、貴重なものです、なりたい自分像があればそれに近づくための生産性の高い練習を行ってくださいね。




※1 私が実際の機材を目の前にあまり練習しない理由にはもう1つ理由があって、それは、イマジネーションの時点で止めておく事が実際の現場でのモチベーションアップにつながるからです。この組み合わせはうまくいきそうだなーとか、ここでこのエフェクトはうまくかかりそうだなぁーというイマジネーションだけで止めておくのです。それは家では実際にせず、現場でやるほうが自分のプレイに好影響なので。モチベーションが一番高いピークをお客さんがいる前に持っていけるんです。これは特に自分が飽き症というやむを得ない性格の持ち主が所以の部分も大きいですけどね。


※2 練習という時間より機材の分析・検証に多くの時間を割きます。新機材は説明書完璧に読みこなし、ブロックダイヤグラムを覚えます。説明書こそが機材の製作者の意図が最大限反映された文献です。一つ一つの機能を頭でシュミレーションできるまで覚えます。この分析・検証のおかげで、それ以降の普段の日常の時間、CMから流れてくる音楽に対して頭の中でエフェクトをかけてみたり、鼻歌にエフェクトをかけてみたりとイマジネーションで処理していくことができます。「触って慣れる練習」ではなく「触らなくても慣れる練習」が重要です。クリエイティビティを高めましょう。